『お洒落は足元から……。』なんて言葉を耳にした事はないだろうか。
毎日のお出かけ着として、真っ先に選ぶのは洋服、アクセサリー、カバンの順。そして、最後の選択は靴である。おざなりにしてしまいそうで、スタイリングを決める上で重要なポイントとなるのも靴。近年は、靴市場における様相が大きく変化している。スニーカーブームに押され、革靴需要は低迷。ビジネスカジュアル化が進む日本の職場でもメンズ靴の主役は革靴からスニーカーへと変化しつつある。特に若者は、シューレースでギュッと締め上げるだけのスニーカー履いていて街に出る。そんな、「革靴離れ」が進む時代だからこそ、若者に革靴との新たな接点を作ることはできないだろうか。
今回は、靴屋歴12年、2020靴磨き選手権大会でベスト16に入賞された靴磨き職人の上田那央樹さんと、靴磨きの魅力に取り憑かれ実際にシューシャイナーになった柏 正信さんにお話を伺った。彼らは、大阪梅田を中心に路上靴磨きとイベント活動(大阪本町・京都など)をしている。1円から~ということにちなんでPenny Lane Shoeshine Boysという名前で活動している。
革靴に精通しているPLSBのお二人を迎え、実際に私の革靴を磨いて頂きながら、今回のテーマに関して聞いた。
革靴は面倒くさい。いつの時代もそう思われてきた。
──お二人の認識する、革靴とのつきあい方の変化とは?
PLSB 上田さん:若い人たちが革靴とどのように付き合うべきか認識できていないのではないかと感じています。以前は、父親の靴磨きを手伝うことを通して「靴をきれいに保つ、大事にする」という考え方が定着していたが、現在はそれが希薄になってきたことがその原因だと感じています。また、革靴を大事にするかどうか、どう付き合うかは、人それぞれの価値観に委ねられることなので強制することはできないのかなと思います。しかし、革靴に対して興味を持っていただくという点では、メンテナンスをしたらどう変わるのかを知っていただく事が第一ステップだと思うので、是非一度、靴磨きを実際に体感して欲しいです。
制履で初めて手にするローファー。「かかとがプカプカして歩きにくい」「歩いていると横幅がきつかったり、痛くなる」
──意外と知らないローファーの難しさとは?
PLSB 上田さん:中学や高校など当たり前のように制靴として扱われているローファーは履く(扱う)のが難しいとされています。靴紐がなく前後2点で支えられている為、一般的にもサイズ合わせが難しい形なのに、成長を見越してあえて大きめのサイズを選んでしまい、靴擦れを起こすことで、革靴とは履きにくいものだと認識してしまい、革靴を敬遠することにもつながっていると感じています。長く履こうとした理由で、わざわざ自分に合ってないサイズを選んでいるのに、実際はそれが原因でかかとの減りや劣化が早くなってしまいます。
──カッコよく履くためには?
PLSB 柏さん:一概にどのようにしてカッコよく革靴を履くというのは難しいのですが、革靴は①「自分のサイズにあったものを履く」、②「日々のちょっとしたケアと定期的なメンテナンス」をする事が基本となります。 綺麗に履くということは外見としてカッコよく、精神面では物を大事にする事で、内面も磨かれると感じています。実際、就活の面接の直前に靴磨きをしに来ていただいた大学生の方が、面接中に綺麗に革靴を履いているということでお褒めの言葉を面接官から頂いたというエピソードを聞きました。
──では、どのように制靴は手入れをしたら良いのか
PLSB上田さん:今多く流通している、履きやすい革靴は合皮を主に使われている事が多いです。合皮の場合、水分を油分付着したまま放置すると劣化してしまうので、水拭きで汚れをとることが基本となります。
本革の場合、柔らかいタオルで汚れを落とす、皮革用クリーナーを使ったり、皮革用クリームを使ったりと方法は様々です。最近は靴磨きに関するネット動画が増えており、そちらを参考にすると良いです。しかし、映像だけでは分からない事も多く、革の状態などによって方法も変わるので、はじめは専門の靴磨きをしてくれる業者に相談し、ケアの方法をレクチャーしていただくことをお勧めします。ちゃんとしたメンテナンスをする事で、何年・何十年と長く履き続けることができます。
──若者に革靴とどう付き合って欲しいか?
PLSB 柏さん:私はこれから若者がどんな感じで革靴の付き合って欲しいか考えたときに「靴の綺麗さを身嗜みのスタンダードとして認識して欲しい」と思いました。校則検査で髪型やスカートの丈だけでなく、靴の綺麗さまで確認する具合になって欲しいと思います。それが、生徒の質を判断する1つにもつながり、学校に対する評価にもつながると思います。学生同士で誰の革靴が一番綺麗か競ってもらいですね。
──お二人の考える、今後の靴磨き業界のあり方とは?
PLSB 上田さん 柏さん:靴磨きはとてもニッチな業界ですが、若者にも靴を大切にする重要性を知ってもらい、靴磨きを広めていきたいと思います。現在は、靴磨き職人として靴をきれいにすることをメインに売りにしていますが、将来的には靴磨きを「職人が行う特別な仕事」だけではなく、誰でも日々のケアは自分で実践できるくらい身近なものになってもらいたいので、PLSBとしてイベントやセミナーを通して若い世代もっと革靴のことを伝える場を増やしていきたいです。
インタビューを通して
革靴を大切に履く・磨くということは、見た目をよくするだけで、大切にするというモノとの付き合い方を学ぶことにもなる、ということですね。それが、本当の「身だしなみ」なんだと、お話を伺って感じました。
今回インタビューさせていただいたお店の営業時間
場所:サルトクレイス茶屋町店
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町10番12号 NU茶屋町3F
営業時間:毎日11:30-20:30
その他詳細はホームページ・インスタグラムを参照
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